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第10回 着床前診断を考える

着床前診断って聞いたことありますか?

これは受精卵が子宮に着床して妊娠が成立する前に、受精卵の遺伝子異常や染色体異常がないかを調べることができる医療技術です。不妊症や習慣性流産で悩む方々が、望まない流産を回避して新しい生命を育てることを可能にします。
本日は、大谷産婦人科の大谷院長先生に、着床前診断についてお伺いしました。


大谷先生

着床前診断を考える

妊娠したいネット:
着床前診断とはどのような治療なのでしょうか?

大谷先生:
体外受精を受けた後、受精卵が着床する前に、すなわち妊娠が成立する前に、染色体や遺伝子を検査します。そして胎児として発育可能な受精卵を選んで子宮に戻します。
体外受精後の流産は、このような受精卵の染色体異常によるものが多く、この治療により、流産率が減少することが証明されています。

妊娠したいネット:
着床前診断により、どのような治療の効果があるのでしょうか?

大谷先生:
体外受精の妊娠率を上昇させる、体外受精後の流産率を減らす、習慣性流産を予防する、トリソミーを診断する、遺伝子疾患を診断する、などのさまざまな効用があります。
自然妊娠では、受精卵の内、59~74%もの割合で何らかの染色体異常があり、これらの多くは着床できないか、流産してしまいます。これは、受精卵の多くに染色体異常があり着床しなかったり、着床しても途中で流産したり死産をしてしまうことが大きな原因のひとつです。つまり染色体異常をもつ受精卵が妊娠しても殆どが流産してしまうという事実があるのです。また、相互転座を保因する習慣流産の患者様が自然妊娠をした場合、例えば日本産科婦人科学会の理事長が総編集をされている新日本女性医学大系によれば、90%以上が流産するとされておりますが、着床前診断を行うことによって10%まで減らすことができます。

妊娠したいネット:
習慣性流産の原因が、相互転座という場合、流産を繰り返しながら何分の一かの確立で正常な染色体を持つ赤ちゃんにめぐり合うまで妊娠を繰り返すしかないのでしょうか。妊娠した喜びとまた流産するかもしれないという不安に苛まれながら、生活するなんて、心身ともに負担が大きすぎます。
でも着床前診断だと、予め発育可能な受精卵を子宮に戻すので、流産の確立が低くなり、患者さんの負担がぐっと減るわけですね?

大谷先生:
そのとおりです。

妊娠したいネット:
先生が、着床前診断を始められた理由は何なのですか?

大谷先生:
わたしは、医者の根本として望まない流産などさせたくないというのが、治療を始めた原点です。心身ともにダメージを受ける患者さんにとってそうだし、われわれ医者も決して望んでいません。
妊婦の染色体異常のあるなしの検査の中には、羊水検査というものがあります。これで遺伝子を調べることは可能です。しかし、検査できる状態はすでに16週。しかしこの時にはすでにしっかり育った胎児なのです。

妊娠したいネット:
先生に、映像を見せていただきました。赤ちゃんがおなかの中で、動いている様子が見れました。。。
すでに16週となると、立派な赤ちゃんです。赤ちゃんの頭・顔・体・手・足もはっきりし、動いています。しかし、その時点まで育って、それで異常が見つかって中絶する選択を患者さんがせざるを得ないなんて、本当に辛いことですね。

大谷先生:
そうです。母体だけでなく精神的にも非常に大きなダメージを与えてしまいます。

妊娠したいネット:
ただでさえ不妊治療で心身のみならず、金銭的にも負担の大きい患者さんが、せっかく妊娠しても、赤ちゃんが育たないというのは本当に悲しいことですね。

月にどれくらい着床前診断を望む患者さんはおいでですか?

大谷先生:
月に10例ほどでしょうか。

妊娠したいネット:
そんなに求める声が患者さんから出ているのに、産婦人科学会で認めないのはなぜでしょうか?
患者さんの意思をもっと尊重すべきではないでしょうか。

大谷先生:
そう思います。医療倫理は何だろうと思うことがあります。何が正しい人道で、倫理なのかと。
望まない中絶というのが治療を始めた原点です。現場の患者さんの悲痛な声を聞けば何とかしたいと思います。
わたしは胎児より受精卵が保護され、わたしは16週ですっかり育っている胎児の中絶が問題にされないのはおかしいと思います。着床前診断の目的を明確にし、メリットデメリットを患者に伝え、そのうえで患者に選択をさせるべきだと思っています。

妊娠したいネット:
治療法のひとつとして、着床前診断という技術があり、患者さんがメリットデメリットを十分に理解したうえで、選択するべきことであって、産婦人科学会が、患者の意思を無視して「生命の選別」として画一的に反対するのはおかしいですね。
体外受精も「採卵」という行為があり、羊水検査も実施されているのに、理屈が通りません。学会は医療現場を知ること、患者の声を聞いてほしいです。そして治療が必要とされる患者にその医療技術を提供してほしいと思います。

今日はお忙しい中、お話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。

あとがき

誰が望まない流産をしたいでしょうか。
誰が手も足もない赤ちゃんの誕生を望むでしょうか。
誰が中絶したいと思うでしょうか。
そのリスクを回避したいと思うのは当たり前のことです。
倫理とは?本当の人道とは?

考えさせられました。

着床前診断をもっと知りたい方は、こちらへ。
http://www.ivf.co.jp/f-diagnosis.html
http://www.pgd.ne.jp/index.html

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大谷徹郎院長 プロフィール

1979年 神戸大学医学部卒業
1984年 神戸大学医学部大学院博士課程修了
女性のホルモンの内分泌に関する研究で医学博士号を授与される
1984〜88年 ワシントン大学医学部留学
女性のホルモンの内分泌に関する研修
1992〜93年 メルボルン大学医学部附属ロイヤル・ウィメンズ・ホスピタル留学
体外受精・顕微授精、腹腔鏡に関する臨床研修
1993年 ドイツ・キール大学医学部留学
腹腔鏡に関する臨床研修
1995年 神戸大学医学部附属病院 助教授
1998年 厚生労働大臣より臨床修練指導医に認定される
2000年 大谷産婦人科不妊センター 院長

大谷徹郎院長 キャリア

日本不妊学会評議員
日本内分泌学会代議員
米国産婦人科学会(ACOG)国際会員
米国不妊学会(ASRM)会員
ヨーロッパ不妊学会(ESHRE)会員
オーストラリア不妊学会(FSA)会員
1985年度 近畿産科婦人科学会賞受賞
1998年度 兵庫県産科婦人科学会賞受賞

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